この記事の結論
AIに広告文を頼むと、整った言葉が数秒で何パターンも出てきます。それでも反応が取れないのは、文章の上手さの問題ではありません。AIに渡している素材が、商品の説明だけになっているからです。AIは素材がなければ、誰にでも当てはまる平均の言葉で埋めます。お客さんの心を動かすのは、実際のお客さんが自分の口で語った言葉です。ひとり起業家と小さな会社が、お客さんの生の声を集めてAIに渡す3つの手順と、聞くときの4つの質問をまとめました。
整っているのに、なぜか反応しない
「この商品を売る広告文を5パターン作って」。AIにこう頼めば、それらしい文章が数秒で返ってきます。誤字もなく、構成も整っていて、パッと見では文句のつけようがありません。
ところが、その広告文を実際に出してみると、クリックされない。LPまで来ても申し込まれない。ひとり起業家や小さな会社の方から、こういう相談がここ1年で本当に増えました。
僕は2011年に創業して、いまはMeta公認代理店〈Meta Business Partners〉として広告運用代行をしています。その立場から見ると、反応しないAIの広告文には共通点があります。
どれも整っているのに、読んだあとに何も残らないんです。
文章としての欠点は見当たらない。でも、読み手の心に引っかかる言葉がひとつもない。これは、文章を書く力の問題ではありません。
AIが出すのは「平均の言葉」
AIは、膨大な文章から「この流れなら、次はこの言葉が来やすい」を学んでいます。ですから、商品名と特徴だけを渡されると、世の中によくある言い回しの平均で文章を組み立てるんです。
「理想の未来を手に入れませんか」「あなたの悩みを解決」。どこかで見たことのある言葉が並ぶのは、そのためです。AIが手を抜いているわけではありません。渡された材料が、商品の説明だけだったんです。
一方で、お客さんの心を動かすのは、そのお客さん自身が使っている言葉です。悩んでいたときの、少し不格好な言い回し。人に言えなかった本音。こういう言葉は、どれだけ優秀なAIでも、手元に素材がなければ作れません。
インタビューの一言が、そのまま見出しになった
以前、広告を担当しているクライアントさんが主催するコミュニティの集まりに、同行させてもらったことがあります。そこで、参加されていた会員さんたちに、たくさん話を聞かせてもらいました。
入会した当時、どんな気持ちだったか。何に悩んでいたのか。どんな言葉に背中を押されたのか。入ってみて、自分の中で何が変わったのか。
その中で、ある会員さんがこう話してくれたんです。
「あのとき、自分でも気づいていなかった不安を、代弁してもらえた気がしたんです」
この一言は、手を加えなくても広告の見出しとして使えるくらい、強い言葉でした。AIに何十パターン作らせても、この言葉は出てきません。会員さんの中にしかなかった言葉だからです。
別の案件でも、同じことがありました。AIで作った広告文では反応が鈍かったのに、ヒアリングの中でクライアントさんが語ったエピソードを元に文章を組み直しただけで、クリック率も申込率も大きく改善したんです。文章の技術には、ほとんど手を入れていません。入れ替えたのは素材でした。
広告の反応を左右するのはお客さんの心理で、その心理を知る手段がリサーチです。この考え方は反応が出ないマーケの正体でも書きました。AIが文章を書くようになった今、この原則はむしろ重みを増しています。
お客さんに聞く4つの質問
話を聞くといっても、身構える必要はありません。僕が会員さんに聞いたのは、次の4つだけです。
1. 申し込む前、どんな気持ちでしたか?
不安、焦り、迷い。申し込む直前の感情は、これから申し込む人がいままさに感じているものです。広告の冒頭で呼びかける言葉は、ここから見つかります。
2. そのとき、何に一番悩んでいましたか?
こちらが想定している悩みと、お客さんが実際に口にする悩みは、言葉がずれていることが多いんですよね。ずれていたら、迷わずお客さんの言い方のほうを採用してください。
3. 最後に背中を押したのは、どんな言葉や出来事でしたか?
申し込みを決めた理由は、売り手が強調している特徴と違うことがよくあります。ここが分かると、広告で何を前に出すべきかがはっきりします。
4. 使ってみて、自分の中で何が変わりましたか?
聞くのは、気持ちや日常の変化です。お客さんが本当に買っているのは、この変化のほうなんですよね。
生の声をAIに渡す3つの手順
聞いた話は、AIに渡してはじめて仕事の速さにつながります。手順は3つです。
1. 聞いた話は、要約せずにそのまま残す
録音して文字起こしするのが一番です。メモなら、相手の言い回しをそのまま書きます。要約すると、相手の言葉が自分の言葉に置き換わってしまうんですよね。言い間違いや、くり返し出てきた言葉にこそ、体温が残っています。
2. AIには「書かせる」前に「拾わせる」
いきなり広告文を頼まず、まず聞き取りの内容から、悩みの言い回し、決め手になった言葉、変化を語った言葉を抜き出してもらいます。どの言葉が何回出てきたかも数えてもらうと、多くのお客さんに共通する言葉が見えてくるはずです。
3. 拾った言葉を使って、広告文に組み立ててもらう
ここで初めて広告文を頼みます。指示には「お客さんの言葉づかいを言い換えずに使うこと」を必ず入れてください。AIは放っておくと、整った言葉に直そうとするからです。
この使い方なら、AIは平均の言葉を量産する道具から、お客さんの言葉を整理して形にしてくれる相棒に変わります。最後にその広告文を出すかどうかの判断は、人がします。その判断で何を見るかはAIが文章を書ける時代、成果を分けるのは「感受性」にまとめました。
AIで誰でも同じように書ける時代だからこそ、差がつくのは、自分のお客さんからしか出てこない言葉を持っているかどうかです。
よくある質問
まだお客さんが少なく、話を聞ける相手がいません。どうすればいいですか?
1人目から始めて大丈夫です。人数より、1人の話をどれだけ深く聞けたかで言葉の質が決まります。お客さんがゼロなら、モニターとして無料や割引で受けてもらった方、問い合わせや相談をくれた方、SNSで質問をくれた方に話を聞いてください。過去の問い合わせメールや相談時のメモも、そのまま素材になります。
聞いた話は、要約してからAIに渡したほうがいいですか?
要約しないで渡してください。要約した瞬間に、相手の言い回しが自分の言葉に置き換わります。言い間違いや方言、くり返し出てきた言葉にこそ体温が残っています。文字起こしやメモをそのまま貼り、相手の言葉づかいを残したまま整理するようAIに頼めば十分です。
お客さんの言葉を広告に使うとき、許可は必要ですか?
発言をそのまま引用したり、お客様の声として名前や写真を出したりする場合は、必ず事前に本人の了承を取ってください。一方で、聞いた話から悩みの言い回しや気持ちの流れを学び、自分の言葉で広告文を書き直すだけなら、引用には当たりません。聞く段階で、どこまで使ってよいかを確認しておくと後が楽です。
お客さんの言葉を、広告とAIの仕組みに乗せませんか?
誰に何を聞けばいいか、聞いた言葉をどこに使えば反応が変わるかは、事業の形によって違います。広告運用からAIの実務活用まで、まとめて相談できます。売り込みは一切しません。
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