この記事の結論
AIに仕事を頼むと、聞いていないのに推測で進む、頼んでいない部分まで直す、できていない箇所を黙って飛ばす。こうした場面が続くと、人はプロンプトに注意書きを足していきます。ただ、その注意書きはチャットを閉じた時点で消えてしまうんですよね。解決の方向は、指示を長くすることとは違います。守ってほしいルールを、AIが毎回自動で読み込む場所に置くことです。ひとり起業家と小さな会社のために、テキスト中心の仕事で押さえたい7つのルールと、それを共通と案件別の2層に分けて置く方法をまとめました。
毎回、同じ注意を書き足していませんか?
AIに文章や資料のたたき台を作らせていると、だいたい同じところで引っかかります。
- 足りない情報を聞いてくれず、勝手に推測して話を進める
- ここだけ直してと頼んだのに、関係のない部分まで書き換えてくる
- 頼んでいない機能や項目を、良かれと思って足してくる
- 調べきれなかった部分を、調べたような顔で出してくる
もともとは、AIにプログラムを書かせている人たちが言い出した不満でした。ある有志が、その不満を12個のルールに整理して公開したところ、AIを使っている人たちの間で一気に広まりました。
面白いのは、この12個が、コードを1行も書かない仕事にもそのまま当てはまるところです。僕は文章作成、コンセプト設計、メルマガ、広告コピーでAIを使っていますが、読んでいて思い当たる項目がいくつもありました。
そして、ほとんどの人はこう対処します。引っかかるたびに、プロンプトへ注意書きを1行足す。推測しないでほしい。ここだけ直してほしい。分からなければ聞いてほしい。
その注意書きは、チャットを閉じた瞬間にゼロへ戻ります。
指示を長くする方向には、天井がある
毎回書くやり方は、2つの理由で続きません。
ひとつは、単純に面倒だからです。7個も8個も注意事項を抱えていると、本題に入る前の準備だけで気力を使います。そのうち「今日は急ぐから省略しよう」となって、省略した日に限って手戻りが起きます。
もうひとつは、品質が揺れるからです。今日は5個書いた、明日は3個だけだった。この差がそのまま成果物の差になります。AIの性能の問題ではありません。渡している条件が毎回違うだけです。
ここで発想を切り替えます。
AIに毎回指示するのをやめて、AIが動きやすい環境を先に整える。
いまのAIには、作業のたびに自動で読み込まれる場所が用意されています。パソコンで動かすタイプなら、決まった名前の文書をフォルダに置いておくだけで毎回読まれるんです。ブラウザのチャット型を使っているなら、プロジェクト機能のカスタム指示の欄が同じ役割を持ちます。呼び方は違っても、考え方は共通です。
テキスト中心の仕事で押さえたい7つのルール
12個すべてを写す必要はありません。プログラムを書く人向けの項目も混ざっているからです。文章やコンセプト設計が中心なら、次の7つで足ります。
1. 前提が足りないときは、推測せずに質問してもらう
いちばん効果が大きい項目です。AIは、情報が足りなくても止まりません。埋めて進みます。その結果、後から前提のズレに気づいて、丸ごとやり直しになるわけです。先に聞く癖を付けさせるだけで、手戻りが減ります。
2. 直すのは指示した箇所だけにしてもらう
1か所だけ直したいのに、全体を書き直して返してくる。これ、よく起きるんですよね。どこを触ってよくて、どこは触らないでほしいのかを、あらかじめルールにしておきます。
3. 手順より先に、何ができたら完了かを決める
手順だけを渡すと、手順をなぞること自体が目的になってしまうんですよね。完了の条件を先に決めておくと、途中の判断を任せられるようになります。
4. 資料同士が矛盾していたら、平均を取らずに確認してもらう
古い資料と新しい資料が両方手元にある状態は、実務では普通です。AIは、矛盾した情報をならして、もっともらしい中間を作ります。そこで止めて聞いてもらうほうが安全です。
5. 工程が多い仕事は、段階ごとに報告してもらう
やったことと、残っていることを、区切りごとに言ってもらいます。最後にまとめて出されると、どこでズレたのかを追うのに時間がかかります。
6. 文体や表記のルールは守る。外れるときは先に相談してもらう
一人称、読者の呼び方、使わない言い回し。このあたりを固定しておくと、直す工程がまるごと減ります。
7. 自信がない部分、飛ばした部分は申告してもらう
黙って飛ばされるのが、いちばん困るところです。分からなかったと言ってもらえれば、そこだけ人が調べれば済みます。
ルールは2層に分けて置く
7つを1枚にまとめたら、置き場所を分けます。ここを分けておくと、あとの運用がぐっと楽になるんです。
- どの仕事にも共通するルール(一人称、読者の呼び方、避けたい表現、報告の仕方)は、どの仕事でも毎回読み込まれる場所へ置く
- 案件ごとに変わるルール(相手の名前、禁止事項、決まっている数字、進め方)は、その案件のフォルダやプロジェクトへ置く
僕は2011年に創業して、いまはMeta公認代理店〈Meta Business Partners〉として広告運用代行をしながら、ひとり起業家と小さな会社へのAI導入支援をしています。自分の会社では、共通の指示書が1枚、案件や仕事の種類ごとの指示書が40枚を超えました。共通の1枚は、いま607行あります。
もちろん、最初からこの分量だったわけがありません。20行ほどのテキストファイル1枚から始めて、同じ注意を2回言った日に1行足す。これを続けた結果が、いまの分量です。
この積み上げがあるおかげで、案件ごとの依頼は本題だけで通ります。クライアント名と今日やることを伝えれば、口調も、避ける表現も、報告の形も、すでにそろった状態で返ってきます。
ひとつだけ補足させてください。ルールを置いても、最後に出すかどうかを決めるのは人です。外に出る文章、金額や日付が入るもの、相手の名前が入るものは、必ず自分の目を通す。この線引きの考え方はAIに任せていい仕事、任せてはいけない仕事にまとめました。
20行から始めて、3週間で育てる
今日からやるなら、手順は3つです。
1. 直近1週間で、AIに2回以上言った注意を書き出す
記憶からで構いません。推測で進めないでほしい。もっと短くしてほしい。この言い方はやめてほしい。だいたい5個から10個は出てきます。
2. やめてほしいことを、やってほしい行動の形に直す
勝手に進めないで、と書くより、前提が足りないときは質問してから進めて、と書くほうが守られます。人に仕事を頼むときと同じです。やめてほしいことだけを伝えても、代わりに何をすればいいのかが伝わりません。
3. 毎回読み込まれる場所に置いて、2週間から3週間使う
使いながら、また同じ注意を言っている自分に気づいたら、その場で1行足します。この足し算を数回くり返すと、自分の仕事の癖まで入った1枚になります。ここまで来ると、他の人には作れない資産です。
なお、この記事で扱ったのは「どう振る舞ってほしいか」のルールです。「どの仕事を、どの手順でやるか」を固定する話は別にあります。そちらはAIを使っている人と使いこなしている人の差で書きました。2つがそろうと、AIへの依頼は本題だけで済むようになります。
毎回同じ注意を打ち込んでいるなら、それは指示の不足ではありません。置き場所の問題です。
よくある質問
ルールを置いておけば、AIは必ず守ってくれますか?
毎回100%ではありません。守られる確率が上がるだけです。それでも毎回手で書き足すより精度は安定します。とくに守ってほしいルールは、短く、具体的に、やってほしい行動の形で書いてください。禁止だけを並べるより効果があります。外れたら、その場でルールの書き方を直して積み上げていきます。
プログラミングができなくても、この仕組みは作れますか?
作れます。中身は日本語の文章だけです。新しいスタッフに渡す社内マニュアルと、ほとんど同じものだと考えてください。普段お使いのチャット型AIにも、毎回自動で読み込ませる欄が用意されています。テキストファイル1枚から始めれば十分です。
最初からきちんと書き切らないと意味がないですか?
逆です。最初から完成させようとすると手が止まります。まずは20行ほどで始めて、2週間から3週間使いながら、自分が毎回言っている注意に気づくたびに1行ずつ足していく。このやり方なら続きます。自分の仕事の癖が入った分だけ、精度が上がっていきます。
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