パソコンのAIから出てきた答えのカードを、人が手に取って仕分けし、必要なものを選んで組み立てている様子を描いたフラットイラスト

この記事の結論

「プロンプトあげます」という無料の配布は、いまやどこにでもあります。それなのに、AIを仕事で使えるようになる人はあまり増えていません。原因の多くは、出てきた答えの扱い方を知らないことにあります。AIの出力は、手を加えて仕上げていくたたき台です。ひとり起業家と小さな会社が、AIの出力を仕事で使える形にするための3つの手順を、ワークショップの現場で見た実例とあわせてまとめました。

プロンプトは手元にあるのに、使えるようにならない

SNSを開けば「このプロンプトをコピペするだけ」「保存版プロンプト50選」といった投稿が流れてきます。無料で配られているものも多く、指示文そのものを手に入れるのは、もう難しくありません。

ところが、ひとり起業家や小さな会社の方から相談を受けていると、こういう声をよく聞きます。

「プロンプトはたくさん保存してあるんです。でも、仕事では結局使っていなくて」

保存したプロンプトを貼り付けて、出てきた答えを読んで、「なんか違うな」と思って閉じる。これを何度かくり返すうちに、AIは自分には合わないものだと感じてしまう。いわば、AIの食わず嫌いです。

つまずくのは、答えが出てきた「あと」

AIは自由度がとても大きい道具です。同じ質問でも、聞き方ひとつで答えがガラッと変わります。だからこそ、良いプロンプトを手に入れれば解決すると考えたくなるんですよね。

でも、僕が見てきた限り、つまずいている人の多くは、答えが出てきたあとで止まっています。

出てきた答えのどこを使えばいいのか分からない。ズレていると感じても、どう直してもらえばいいか分からない。結果として、1回目の答えだけで良し悪しを判断して終わってしまうんです。

そして、出力をうまく扱うには、プロンプトの意味も分かっている必要があります。この一文は何のために入っているのか。自分の事業ならどこを差し替えるのか。そこが分からないまま貼り付けると、答えがズレても、原因がプロンプトにあるのか、自分の渡し方にあるのかを切り分けられません。

プロンプトだけを持っている人と、出力の扱い方を知っている人の違い 上段はプロンプトを貼り付け、1回目の答えを読んで、なんか違うと感じてやめてしまう流れ。下段はプロンプトの意味を読んで自分用に差し替え、出てきた答えを使える部分と違う部分に仕分け、ズレを言葉にして返すことで、仕事で使える形になる流れ。 ✕ プロンプトだけを持っている もらったプロンプトを そのまま貼る 1回目の答えだけで 良し悪しを決める 「なんか違う」で 使わなくなる ○ 出力の扱い方を知っている 意味を読んで 自分用に差し替える 答えを仕分けて ズレを言葉で返す 仕事で使える 形になる
図: 同じプロンプトでも、答えが出たあとの扱い方で結果が分かれる

ワークショップで見た、使える人に変わる瞬間

以前、僕が共同主宰しているオンラインビジネスの講座で、AIを使ってビジネスのコンセプトを設計するワークショップを開きました。目的は3つです。コンセプトとは何かという基本を理解してもらうこと。AIを使ってコンセプトを言葉にすること。そして、AIを使えるようになってもらうことでした。

そこでは、僕が実際に使っているプロンプトをお渡ししました。ただし、渡して終わりにはしていません。プロンプトの中身と意味を解説し、その場で一緒に出力させ、出てきた答えを共有しながら、どこをどう使っていくかまで見てもらいました。

終わったあと、参加者の方からこんな感想をいただきました。

「あの後、教わったことを元にいろいろ試しています。AIを使うと仕事の効率がぐっと上がることを、改めて実感しています」

この日が初めてAIに触れたという方もいました。それでも、その後も自分で使い続けてくれている。特別なプロンプトを渡したからではありません。答えが出てきたあとに、何をすればいいかを知ったからだと思っています。

AIの出力を仕事で使える形にする3つの手順

ワークショップで伝えていることを、ひとりでも実践できる形にまとめます。

1. プロンプトの意味を読んで、自分用に差し替える

もらったプロンプトは、貼る前に一度読んでください。この一文は何を求めているのか。どこが自分の事業に置き換える場所なのか。業種、お客さん、価格帯など、自分の情報が入るべき場所が空欄のままなら、答えが一般論になるのは当然です。

2. 出てきた答えを「使える」「違う」「足りない」に仕分ける

AIの答えは、ここから仕上げていくたたき台です。全部を採用するか、全部を捨てるかで考えず、文章や項目ごとに3つに分けてみてください。仕分けの基準は、自分の事業に合っているか、お客さんから実際に言われたことがある言葉か。この判断は、事業をいちばん知っているあなたにしかできません。

3. ズレを言葉にして、AIに返す

「もっと良くして」では、AIは何を直せばいいか分かりません。「2つ目の案は方向性が合っている。ただ、うちのお客さんは40代の女性が中心なので、言葉をもう少しやわらかく」というように、合っている点と違う点を理由つきで返します。これだけで、2回目の答えは見違えるほど変わります。

うまくいったやり取りは、指示文ごと保存しておいてください。次からはそれが、あなた専用のプロンプトになります。繰り返す仕事を型にしていく考え方はAIを「使っている人」と「使いこなしている人」の差で詳しく書きました。

プロンプトは、AIとのやり取りの入口

プロンプトは、AIとのやり取りを始めるための入口です。答えはその先の、出力を読み、仕分け、言葉にして返す往復の中で形になっていきます。

AIの回答がズレる原因の多くは、こちらが渡している情報の側にあります。この点はAIの回答が的外れになる本当の理由でも書きました。もらったプロンプトをもう一度開いて、1回目の答えを仕分けるところから始めてみてください。

よくある質問

良いプロンプトを手に入れること自体には、意味がないのですか?

意味はあります。よくできたプロンプトは、何をどの順番でAIに伝えればいいかの見本になります。ただ、貼り付けて終わりにすると、その価値の半分も使えません。なぜこの一文が入っているのか、自分の仕事ではどこを差し替えるのかを読んでから使うと、同じプロンプトでも出てくる答えが変わります。

AIの答えが正しいかどうか、自分では判断できません。どうすればいいですか?

最初から正しさを判断しようとしなくて大丈夫です。まずは「自分の事業に合っているか」「お客さんに言われたことがある言葉か」という、自分にしか分からない基準で見てください。数字や制度など事実に関わる部分は、AIに出典を聞いたうえで、公式の情報で確かめる習慣をつければ十分です。

やり取りを何回くり返せば、使える答えになりますか?

回数より、ズレを言葉にできているかで決まります。「もっと良くして」と何度頼んでも、AIは何を直せばいいか分かりません。「ここは合っている、ここは違う、なぜなら」と返せば、多くの場合2〜3往復で使える形に近づきます。うまくいったやり取りは、次から使えるよう指示文ごと保存しておいてください。

Web Culture Service CEO 加藤理人

加藤理人(かとう みちひと)

Web Culture Service CEO/Meta公認代理店〈Meta Business Partners〉

2011年創業。ひとり起業家と小さな会社のための「AI自動化マーケティング設計」を提唱。AI導入支援・Webマーケティング支援・Meta広告運用代行の3事業を展開し、東海テレビ・Yahoo!ニュースで業界有識者として解説。奈良を拠点に全国オンライン対応。

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