店主が、たくさんのジャムが並んだ棚と少しだけ並んだ棚を見比べ、虫眼鏡やグラフを手がかりにどちらが良いかを考えているイラスト

この記事の結論

「選択肢は少ないほど売れる」で有名なジャムの実験は、その後の再現実験では逆の結果も出ていて、今ではどちらが正しいとも言い切れなくなっています。マーケティングの定説も、専門家のアドバイスも、自分の商品で試すまでは仮説にすぎません。大切なのは、正解を探すことより、仮説を一文で書く、1回に変えるのは1か所だけにする、判断する数字と期間を先に決める、という手順で確かめる習慣を持つことです。

「選択肢を減らせば売れる」と聞いたことはありませんか?

マーケティングの本やセミナーで、よく紹介される話があります。スーパーマーケットの「ジャムの実験」です。

試食コーナーに並べるジャムを、24種類にした日と6種類にした日で比べたところ、6種類のほうが実際に買った人の割合がずっと高かった。だから、人は選択肢が多すぎると迷って選べなくなる。売上を伸ばしたいなら、商品の選択肢は絞って選びやすくしたほうがいい。2000年に発表された研究がもとになっていて、聞いたことがある人も多いはずです。

僕もこの話は何度も耳にしてきましたし、筋の通った話だと感じていました。メニューを絞ったら注文が増えた、という話も実際によく聞くんですよね。

ただ、この「有名な定説」にも、続きがあるんです。

再現実験では、逆の結果も出ている

この実験は、その後いろいろな研究者によって何十回も再現が試みられています。その結果はどうだったか。

選択肢を少なくしたほうが売れた結果もあれば、選択肢を多くしたほうが売れた結果もありました。数十件の実験をまとめて分析した研究では、平均するとはっきりした差は見られない、という結論になっています。つまり今では、「選択肢を少なくすれば売上が上がる」とは言い切れない、というのが正直なところです。

考えてみれば当然の結果です。商品の種類、ジャンル、オンラインかお店か、買う人の層、価格帯。条件が変われば、人の選び方も変わります。ある場所で正しかったことが、あなたの商品でもそのまま正しいとは限りません。

定説を信じ込む場合と、仮説として検証する場合の違い 上段は、定説をそのまま正解として取り入れ、結果が出なくても理由が分からないまま続けてしまう流れ。下段は、定説を仮説として一文にし、1か所だけ変えて試し、数字で判断して次の仮説につなげる流れ。 ✕ 定説を「正解」として取り入れる 本やセミナーの 定説をそのまま採用 反応が出なくても 理由が分からない 同じ施策を 続けてしまう ○ 定説を「仮説」として確かめる 仮説を一文で書き 1か所だけ変える 先に決めた数字と 期間で判断する 答えが残り 次の仮説へ進める
図: 同じ定説でも、仮説として確かめれば、外れたときも答えが手元に残る

プロのアドバイスも、出した時点では仮説

これは、僕たちコンサルタントのアドバイスでも同じです。

僕はMeta公認代理店(Meta Business Partners)として広告運用を代行し、ひとり起業家や小さな会社のマーケティングを支援しています。相談を受けたら、それまでの経験と知識から、いちばん確率が高いと思う打ち手をお伝えします。それでも、伝えた時点ではまだ仮説です。100%当たるアドバイスは、ありません。

たとえば以前、ブランドの世界観を大切にしていたクライアントさんの広告で、表示はされるのにクリックされない状態が続いていました。動画は雰囲気が良いものの、冒頭で「誰に向けた何の広告か」が伝わっていない。そう仮説を立てて、冒頭の数秒だけを「誰向け・何のためか」がひと目で分かる形に変えました。結果、クリック率は約1.2倍になり、申込率も上向きました。

ただ、これも「冒頭を変えれば必ず伸びる」という法則ではありません。そのクライアントさんの商品と見込み客で、試してみて初めて分かった答えです。商品と見込み客が変われば、変えるべき場所も変わります。

仮説を「検証」に変える3つの手順

では、ひとり起業家や小さな会社は、どうやって施策を確かめればいいのか。大がかりな仕組みは要りません。次の3つを押さえるだけで、施策は「やってみた」から「確かめた」に変わります。

1. 仮説を一文で書き出す

「何を変えたら、何がどうなるはずか」を一文にします。「LPのボタンの文言を具体的な行動に変えれば、申込率が上がるはず」という形です。頭の中にあるだけの仮説は、結果を見たあとで都合よく書き換わってしまいます。書いておけば、当たったのか外れたのかがはっきりします。

2. 1回に変えるのは1か所だけにする

広告の画像も、見出しも、LPの構成も一度に変えると、数字が動いても、どの変更が理由なのか分かりません。変えるのは1か所、比べるのは2パターン。地味ですが、これがいちばん早く答えにたどり着く方法です。

3. 判断する数字と期間を、始める前に決める

「クリック率で判断する」「申込が各20件たまるまで見る」「最低1週間は続ける」。こうした基準を先に決めておきます。始めてから決めると、数日の数字に一喜一憂して、結論を急ぐことになる。基準を先に置くことが、自分の思い込みから仮説を守るいちばんの方法です。

正解を探すより、確かめる仕組みを持つ

どんな施策も、仮説の段階では「外れているかもしれない」。この前提を、いつも頭の片隅に置いておいてください。

有名な定説や、実績のある人のノウハウを取り入れること自体は悪くありません。取り入れたノウハウは、「自分の商品ではどうか」を確かめる材料として使ってください。そうすれば、当たっても外れても、あなたの手元には自分のビジネスだけの答えが1つずつ増えていきます。

僕は2011年に創業してから、数えきれないほどの広告とLPを検証してきましたが、今でも結果を見る前に答えを言い切ることはしません。まずは今やっている施策を1つ選んで、「何を変えたら、何がどうなるはずか」を一文で書き出すところから始めてみてください。

よくある質問

広告費が少ないのですが、それでも検証はできますか?

できます。少ない予算ほど、一度に試す仮説を1つに絞ってください。広告なら冒頭の一文だけを変えた2パターンを並べる、LPならボタンの文言だけを変える、という形です。変える場所を1つにしておけば、数字の差がそのまま答えになります。メルマガの件名を2通りで送り分けるなど、広告費がかからない検証から始めるのも有効です。

どのくらいの期間・数字が集まれば判断していいですか?

始める前に決めておくことが大切です。目安としては、比べたい数字(クリック数や申込数)がそれぞれ数十件たまるまでは結論を出さないようにします。数件の差で勝ち負けを決めると、たまたまの偏りを答えだと思い込んでしまいます。期間で区切る場合も、曜日による差が出ないよう最低1週間は見てください。

検証の結果、仮説が外れたら失敗ですか?

失敗ではありません。「この方向は違った」という答えが1つ手に入ったということです。外れた仮説を記録しておくと、次に同じ遠回りをしなくて済みます。怖いのは、外れていることに気づかないまま同じ施策を続けることのほうです。

Web Culture Service CEO 加藤理人

加藤理人(かとう みちひと)

Web Culture Service CEO/Meta公認代理店〈Meta Business Partners〉

2011年創業。ひとり起業家と小さな会社のための「AI自動化マーケティング設計」を提唱。AI導入支援・Webマーケティング支援・Meta広告運用代行の3事業を展開し、東海テレビ・Yahoo!ニュースで業界有識者として解説。奈良を拠点に全国オンライン対応。

あなたの集客、どこから確かめるか一緒に決めませんか?

広告・LP・メルマガのどこに仮説を置いて検証するか、現状の数字を見ながら整理できます。売り込みは一切しません。

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